能登半島の入り口、和倉温泉を抱える七尾市に住む食文化の伝道師マダム櫻子が、おいしいお酒の世界をご案内します。

能登半島の入り口、和倉温泉を抱える七尾市に住む食文化の伝道師マダム櫻子が、おいしいお酒の世界をご案内します   マダム櫻子がいるお店は、(有)西田酒店 〒926-0015 石川県七尾市矢田新町ホ58 Tel0767-52-0258 Fax 0767-52-0259

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マダム櫻子紹介

ワインを眺めるマダム櫻子

出身

石川県

(有)西田酒店

店長

1992年

日本ソムリエ協会認定、ワインアドバイザー

1996年

日本酒サービス研究会、酒匠研究会連合会認定、きき酒師

1998年

フランス食品振興会認定、コンセイエ
 
マダム櫻子プロフィール

 化学技術者の夫と結婚し、難波の奥座敷(堺市)に6年間社宅生活を満喫し、二人の息子たちと三食昼寝付きの毎日。
が・・・夫が酒屋の長男であったがため店の跡継ぎとして七尾に帰り、以来、西田酒店の嫁として、不慣れな毎日。(失敗談には事欠かない)

完全七尾っ子の三男のおっぱい育児が終わるころ、タイミングよくワインに出会い子供の成長と共に、ワインのキャリアを背伸びすることなく少しずつ広げ、気力、体力、容色の衰えが確実になった40代に突入するや、焦りまくってソムリエ協会のワインアドバイザーを独学で取得(一浪しました)

その間自己投資に使った時間と経費を、ぶどうの金バッジで形に変えられ西田の嫁の立場を確保。やれやれ〜・・現在に至っています。

ワインを触らせておけば機嫌がいい私。ニコニコするたびワインセラーに在庫は増え、夫の渋い顔に浮かぶしわの深さは段々深まり・・・
これまた現在に至っています。
 

マダム櫻子の名づけ親は。
  西田酒店のダメ嫁時代に、七尾に木材を運んでいた旧ソビエトの船員さんの一人に、片言の英語で名前を教えたら、入港するたびに大きな声で「マダムさく〜ら」と、呼びかけ、笑顔で来店されました。
これは「つ・か・え・る」と、この時思ったのです。
「スパシィーバ、イワンさん。」

詳細及び本音は、マダム櫻子のエッセイ〈↓)財団法人 七尾城址文化事業団発行第19号掲載をお読みくださいませ

マダム櫻子エッセイ

                           ワインに乾杯

 私の父は完全な下戸で、私はアルコールっ気の全くない家で育った。こんな私が縁あって酒屋に嫁ぎ見たことも聞いたこともない酒類の多さに驚きながらの家事育児。店の中では一番アテにされない人間としての何年かが過ぎた頃、某問屋さん主催の「酒販店のためのワイン入門セミナー」が開かれ、ぼちぼち子供に手のかからなくなった、店で一番役立たずの私が受講することになり、それがワインと私との最初の出会いとなった。
 
 その会を皮切りに、一年に2〜3回開かれるワイン勉強会ななるものには全て参加。主流はソフトな口当たりのドイツワインかフランスワインだったと記憶するが、会場は金沢のホテルのことが多く、とても優雅なもので勉強会というより、ワイン飲み放題のお食事会といった塩梅。今思い返すと、ずい分と大したワインが惜しげもなく供されたはずなのに、残念なことに何が出され、何を飲んだのか、何一つ覚えていない。今ならなぁ、今なら一滴も残さず堪能するのになぁ。それこそグラスの中のワインの色を、輝きを、眼で楽しみ、褒めちぎり、グラスの中から立ちのぼってくる香りの刻々の変化に酔い、そして、口中全体でワインを味わい飲み干すときの喉ごしと、アフターティストを楽しむのになぁ。それでも元々ワインを含め、全てのアルコールに対して無知で白紙状態の私にはどの会も面白く、収穫の多いものであった。唯一不満は、与えられた知識が横のつながりをなかなか持たなかったこと。
 
 もっと突っ込んで知りたい、一貫性を持って学びたいの気持ちが高じて、一年間のワイン通信講座を受講。葡萄のことからワイン醸造、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、アメリカ、オーストラリア、そして日本のワインについて、地理、歴史、法律と多岐にわたり、こりゃあどえらいもんに首を突っこんでしまったゾの思いの反面、年二回開かれたスクーリングで初めて見た本物のソムリエさんのプロの仕事に魅せられ、何が何でも黒服に輝くソムリエ協会のブドウのバッジが欲しくなり、座右の銘が「チャランポラン」と「ケ・セラ・セラ」の私にしては、気合いを入れてのお勉強の毎日。
 
 資格試験のためだけの勉強なら、多分途中で放り出してしまっていたと思うが、どっこい、現実逃避とでも言おうか、母であり主婦であることから解放されて、一個人としての時間が持てたことと、自分の中に眠っていた知識や感性が、ワインを通して再び表舞台に現れ、昔は全く気にも留めなかった歴史の事象が、ぶどうとワインを主軸に見直すと、教科書の記載事項、暗記項目としてではなく、全て大きなうねりを持った大河の如き人間の営みの変遷として見えてくる。それが面白くて面白くて、いまだに尽きぬ興味と好奇心を駆り立ててくれる。と書けば聞こえは良いが本音は違う。そんなにカッコウ良いものじゃない。単純に、気力・体力・能力の眼に見えての衰えからくる焦燥感と、自分に投資してもらった分しっかり形にせにゃあ、このワインかぶれは、本当に嫁の道楽になっちまうの切迫感が原動力だったのだ。
 
 実際、フランスワインの格付けや複雑な約束事などのディテールは、老化の坂道を一気に駆け降りている私の頭では覚えても覚えてもポロポロ抜け落ち、四十才以上の受験者にはハンディをつけるべきだと思ったし、二十代の若い方達が本当にうらやましかった。十代までに身につけた知識はいまだに残っているのに、三十路半ばから身につけた知識の何とはかないことよ。鉄は熱いうちに打て、だの継続は力なりなど、およそ私には似合わない言葉の重みがよく分かる。この事は、資格取得後にもっと強く重く感じるようになった。
 
 ただ私には、今日に至るまでたっぷりと時間があり、口あたりのソフトな甘口の飲みやすい白ワインから入り、渋味と酸味のしっかりした赤ワインを美味しいと思えるようになるまで、様々なワインと無理なく背伸びせず親しんでこれたが、フレンチパラドックスに始まった昨今の嵐の如き赤ワインブームには、只ただ瞠目するのみ。赤ワインに含まれるポリフェノールはどうやら体に良いらしい。何がどう良いのか、効くのか分からんが、飲むなら赤ワイン、それも一番渋いヤツ、と連日赤ワインの礼賛。
 
 確かにフランス人は、肉類中心の食生活をしている欧米各国の中では心臓疾患による死亡率が一番低く、その原因が食事と共に摂っている赤ワインに含まれるポリフェノールにあるのは事実。が、フランスの人達は、ポリフェノールを摂取するために赤ワインを飲んではいない。ましてや赤ワインだけを飲んでいるわけではない。食事を楽しみ、食卓を共にする人々との和を大切にしている彼らには、食事もワインも楽しいおしゃべりもどれも大事で不可欠。食事にワインがあったほうがより美味しく楽しいと知っているからこそなので、決して体のために飲んできたわけではない。
 
 又、フランスのルイ王朝の頃には、すでに料理とワインの相性が研究され、組み合わせがよかったら、料理もワインも更に美味しくなり、至福の時を与えてくれることも知っていた。食を楽しむことにかけては筋金入りなのだ。が、反面、普段の食卓のバリエーションは乏しく、肉か魚を焼くか蒸すか煮込むかの類。毎日あまり変化がない。
 
 それに比べると我々の食卓の何とにぎやかで国際色豊かなことか。昨日は和食、今日は中華もどき、明日は我が家風洋食とメインディッシュは毎日異なり、日本の主婦は一番お料理上手で食いしん坊なのではと思ってしまう。
 
 おまけに七尾は、四季折々山の幸、海の幸の豊富な食文化のリッチな所。普段口にしている食べ物の何と贅沢なことか。旬の魚や山菜を蔵や納戸で眠っている輪島塗やお宝の器に盛って、冷えた白ワインに合わせるも良し、赤ワインでためすも良し、うまくマッチしたら「してやったり!」「肉には赤、魚には白ワイン」、これは本当、「肉にも白、魚にも白」、も本当、「肉にも魚にも赤」これも本当。要は、自分で美味しいと感じたら、それがベストなわけ。
 
 ちなみにW・H・O=世界保健機関が、只今のところこれが一番健康で理想的な食事と紹介しているのが、バランスのとれた地中海式食生活。米、パン、パスタなどの主食をたっぷりとって、新鮮な野菜、果物、オリーブ油、そして魚介類や海藻、肉類に毎日適量のワイン(約コップで二杯分)を、食事と共に摂る。心がけることはただ一つ、飲みすぎないこと。
 
 こんな風にワインと関わって早十五年、年と共に劣化したり、なくなったりする能力もあれば、ぜい肉以外に身に付いてくる能力もある。それを経験、キャリアとでも呼べばいいのか、とにもかくにも、私はワインが大好きだ。飲んで良し、語らって良し、ワインを通して様々な所で個性豊かな“我、ひとえにワインを愛す”人達との出会いがあり、眼からウロコ、位の衝撃的うまいワインとの出会いがあった。

忙しさに流されアタフタと過ぎて行く日々の暮らしの中での季節の変化を、陽の光、風に匂い、風の気配で感じ取る瞬間も大好きだ。風には、四季の匂いと呼吸があると思っている。

七尾の風はとても優しい。ともあれ、今日も一日が終わる。大過なく過ごせたことに感謝し、又、明日がよき日であることを願って、乾杯。


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